日本はなぜここまでおかしくなったのか? そのシンプルな理由【適菜収】
【隔週連載】だから何度も言ったのに 第68回
■小沢一郎の「大罪」
自民党の堀井学が選挙区内の有権者に秘書らを通じて香典を配った件。堀井は所属していた安倍派から5年間で計2196万円の還流を受けたが、政治資金収支報告書に収入として記載していなかった。その裏金が香典の原資になっていた可能性があり、悪質性が高いと東京地検特捜部は判断し捜査を開始したという。
なんだかよくわからない。裏金の還流自体が犯罪であり、悪質なのだから。トカゲの尻尾切りというやつですかね。
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《小沢一郎『日本改造計画』 今こそ読みたい日本改革構想 牧原出/東京大学先端科学技術研究センター教授》(「日経BOOKプラス」)というネット記事を読んだ。リードによると、「日本の政治に絶望している人に読んでほしい本」とのこと。勘弁してほしい。政治に対する絶望を生み出したが小沢ではないか。
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牧原は言う。
《冷戦という国際環境の下で作られた戦後日本をどう変えていくべきか。小沢は冷戦終結を明治維新、第2次世界大戦に続く変革期と捉え、日本を「普通の国」にするための「第3の改革」を訴えました》
《米国人は自分で自分の身を守ろうとするのに対し、日本人は自分の身さえ国や規制によって守ってもらおうとする。だから、小沢は日本人には「自己責任」、地方には「自立」、政治では同調圧力に負けない「強いリーダーシップ」が大事だと説き、大久保利通、伊藤博文、原敬、吉田茂といったリーダーの名前を挙げます》
《政治家として日本の将来をしっかりと見据えよう、新しい日本の政治ビジョンをきちんと作り上げようという気迫が伝わります。その背後には、冷戦終結後、世界中で起きた改革の波がありました。単に社会主義国が崩壊しただけでなく、諸外国でも、例えば司法権の強化、憲法における人権擁護の強化、地方分権化、さまざまな民主化や透明化の動きがありました》
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では、その小沢の「新しい日本の政治ビジョン」とやらは何を生み出したのか。「司法権の強化」「憲法における人権擁護の強化」「透明化」が進行したのか。まったくの逆である。
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私事で恐縮だが、この度、『自民党の大罪』(祥伝社新書)を上梓した。そこでは『日本改造計画』が日本凋落の大元にあることも説明した。新自由主義的な経済改革、首相官邸機能の強化、軍事も含めた積極的な国際貢献、政権交代のある二大政党制を可能とする政治改革(小選挙区制の導入)……。小沢はこれらを「民主主義的革命」と呼んだ。熟議や合意形成を重視した保守政治をぶち壊し、権力を集中させ、一気に日本を「改造」しようとしたわけだ。この流れは、小泉純一郎政権、民主党政権、安倍晋三政権を経て、日本を終焉に追い込んだ。
文:適菜収
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